00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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TOKYO DAYS 03 第3話、完結です。
7話放映前に書き上げてましたが、ちょっと7話の補完めいた話になりました。
それではどうぞ。
TOKYO DAYS 03(その3)
--------------------------
俺のかわいい子猫は勢いよく頭から毛布を被ってしまった。
TOKYO DAYS 03(その3)
寝室のドアを閉めてリビングに戻ると、ちょうどアレルヤが風呂から出た所だった。腰にタオルを巻いただけの男に、俺のTシャツと新しいトランクス、それからトレーニング用ジャージ上下を放り投げてやる。
アレルヤが服を着るところをまじまじと見ながら
「俺お前には欲情しないんだよなあ」
というと
「僕は湯あたりするかと思いましたよ」
と切り返される。あ、さいですかやっぱりね。すべて承知していましたかそうですか。だったら
「最後までやればよかったなあ」
「気をつかわせてごめんなさいって言うところ。ほら、早く飲み物寄越してくださいよ」
と、こいつ遠慮がない。形ばかり敬語だがものすごーくぞんざいに扱われている気がするぞ。いつもは礼儀正しいのに、お前本当はこういうキャラか?
「この二重人格めが。コーヒーでいいか?夜中だけど」
「アルコール」
アレルヤは俺の台詞にちょっと微妙な顔をしたが、すぐにどっかりとソファに沈み、盛大なため息をついた。
両腕をソファの背にかけてだらしなーく足を開いて脱力する男。こいつ普段は折り目正しく端正で絵になるのに、どうしてこうオヤジみたいなむっさい感じも似合うんだろう。ほんと、人にはいろんな顔があるもんだ。
「酒ね、はいはい」
ぬるいビールを何本か冷凍庫に放り込み急冷モードにし、適当につまみを見繕う。って俺はオカンか。亭主の世話をする妻ですか。
アレルヤは天井をぼんやりと見上げているが、どうせティエリアのことを考えているのだろう。こいつがティエリアに特別な感情を抱いているのは、見ていて丸わかりだし、自覚もあるだろうに。
「素直になりゃいいのに」
「何が」
「ティエリアのこと」
「・・・男だよ」
「俺たちだって男だ」
そうだけど、でも・・・とこいつは言いよどむ。男同士を否定したことを気にしているんだろう。俺はそんなこと気にしない。世間的には俺たちの方がアウトサイダーだ。
俺は刹那のことが好きだし、そのことは隠さない。もともと俺も男なんてまっぴらごめんだったが、好きになっちまったもんはしょうがない。
たとえそれが吊り橋効果だろうが3メートルの法則だろうが、大事な人を大事にして、共にあることを喜び合えるって事のどこが悪いんだ?
昔何となく心惹かれて、ミス・スメラギに近づいたことがある。
毅然として力強そうなわりに、なんだか不安定で危なっかしくてほっとけない気がしたから、そのギャップに心惹かれた。でも返ってきたのは完璧な拒絶。
曰く
「戦術予報士として感情を乱すことは許されないの。この狭い人間関係の中でそういうことになったら、客観的な視点であなた達を見られなくなるわ。私は誰も特別に思ったりしない」
だ、そうだ。
そういう言葉を聞きたい訳じゃなかったんだけど。
あちらさんはどう思ったか知らないが、俺は決して遊びでコナかけたわけじゃなかった。狭い世界における恋愛のリスクなんて、今更言われるまでもない。けれどあんな、感情をまるっきり置き去りにした言い方をされたら、どうにもならないじゃないか。
彼女の覚悟がなんだか余計に痛々しかったが、本気は伝わってきたから、俺もそれ以上無理強いしなかった。
今にして思えば、俺の気持ちもその程度ということだったんだろう。
けれど、責任感とか使命感とか立場とか、人の目だとかモラルだとか。そんなもので大事な人に想いを伝えられないのなら、俺はごめんだ。3メートルの法則がどうした。吊り橋効果上等。顔をつきあわせている時間が長いから惹かれ合ってそれの何が悪い。
同じ時間と経験と会話と、それに伴う感情を共有して、理解しあうんじゃないのか。
触れ合ってつながって熱を感じ合ってにおいを交換して、互いのあたたかさに生きてるってかみしめるんじゃないのか。
いつか吊り橋わたった後、平坦な地は一緒に歩けないかもしれないから、なんて予想して、最初から手を伸ばすことすらやめちまうのか。
つないだ手のあたたかさも知らずに。
爆風が去った後残ったのは父さんと母さんの手だけだった。体がふきとんじまったのに、手だけはしっかり握り合っていたんだ。仲のいい二人だった。
その朝おれは二人にひどいことを言った。大嫌いだ、あんたたちなんかいなくたっていい、バカヤローって。母さんは泣いていた。
本気じゃなかった。いつか修復できる傷だと思って甘えていた。そのうちごめんって謝れば、きっと許してくれるって思ってた。
冷たくなった手に謝ったって、なでてもらえるわけじゃない。抱きしめてもくれない。許してなんかもらえない。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。かえってきてよ、お願いだから。胸がくるしいよ。たすけてよ。お願いだよ。
神様に祈ったけど。
奇跡なんて、起きやしなかった。
あとでなんてない。いつかなんかこない。
今しかないんだ。
大事な人に大事だって伝えられるのは。
「んで、どうして締め出し食らったの」
酒とつまみをテーブルに並べながら問う。
「ん~、なんて言うか」
アレルヤにビールをすすめ、俺はノンカフェインのお茶にしておく。スナイパーに酩酊は禁物だ。
あの後、と話し出すアレルヤに、うんうんと相づちを打つ。聞いてるとなんだかちょっとのろけめいた話っぽいけど、甘すぎてお茶のつまみにはちょうどいいかもしれない。
語りたいときに語っちまえ。ビールはキンキンに冷えて飲み頃。ワインもあるし、明日はオフだ。
お前が語りたいだけ語ったら、俺がめいっぱいのろけてやる。
愛しい人を、今この腕に抱きしめられることのシアワセを、耳にたこができるぐらいにな。
さあ、恋バナをはじめよう。
end
俺のかわいい子猫は勢いよく頭から毛布を被ってしまった。
TOKYO DAYS 03(その3)
寝室のドアを閉めてリビングに戻ると、ちょうどアレルヤが風呂から出た所だった。腰にタオルを巻いただけの男に、俺のTシャツと新しいトランクス、それからトレーニング用ジャージ上下を放り投げてやる。
アレルヤが服を着るところをまじまじと見ながら
「俺お前には欲情しないんだよなあ」
というと
「僕は湯あたりするかと思いましたよ」
と切り返される。あ、さいですかやっぱりね。すべて承知していましたかそうですか。だったら
「最後までやればよかったなあ」
「気をつかわせてごめんなさいって言うところ。ほら、早く飲み物寄越してくださいよ」
と、こいつ遠慮がない。形ばかり敬語だがものすごーくぞんざいに扱われている気がするぞ。いつもは礼儀正しいのに、お前本当はこういうキャラか?
「この二重人格めが。コーヒーでいいか?夜中だけど」
「アルコール」
アレルヤは俺の台詞にちょっと微妙な顔をしたが、すぐにどっかりとソファに沈み、盛大なため息をついた。
両腕をソファの背にかけてだらしなーく足を開いて脱力する男。こいつ普段は折り目正しく端正で絵になるのに、どうしてこうオヤジみたいなむっさい感じも似合うんだろう。ほんと、人にはいろんな顔があるもんだ。
「酒ね、はいはい」
ぬるいビールを何本か冷凍庫に放り込み急冷モードにし、適当につまみを見繕う。って俺はオカンか。亭主の世話をする妻ですか。
アレルヤは天井をぼんやりと見上げているが、どうせティエリアのことを考えているのだろう。こいつがティエリアに特別な感情を抱いているのは、見ていて丸わかりだし、自覚もあるだろうに。
「素直になりゃいいのに」
「何が」
「ティエリアのこと」
「・・・男だよ」
「俺たちだって男だ」
そうだけど、でも・・・とこいつは言いよどむ。男同士を否定したことを気にしているんだろう。俺はそんなこと気にしない。世間的には俺たちの方がアウトサイダーだ。
俺は刹那のことが好きだし、そのことは隠さない。もともと俺も男なんてまっぴらごめんだったが、好きになっちまったもんはしょうがない。
たとえそれが吊り橋効果だろうが3メートルの法則だろうが、大事な人を大事にして、共にあることを喜び合えるって事のどこが悪いんだ?
昔何となく心惹かれて、ミス・スメラギに近づいたことがある。
毅然として力強そうなわりに、なんだか不安定で危なっかしくてほっとけない気がしたから、そのギャップに心惹かれた。でも返ってきたのは完璧な拒絶。
曰く
「戦術予報士として感情を乱すことは許されないの。この狭い人間関係の中でそういうことになったら、客観的な視点であなた達を見られなくなるわ。私は誰も特別に思ったりしない」
だ、そうだ。
そういう言葉を聞きたい訳じゃなかったんだけど。
あちらさんはどう思ったか知らないが、俺は決して遊びでコナかけたわけじゃなかった。狭い世界における恋愛のリスクなんて、今更言われるまでもない。けれどあんな、感情をまるっきり置き去りにした言い方をされたら、どうにもならないじゃないか。
彼女の覚悟がなんだか余計に痛々しかったが、本気は伝わってきたから、俺もそれ以上無理強いしなかった。
今にして思えば、俺の気持ちもその程度ということだったんだろう。
けれど、責任感とか使命感とか立場とか、人の目だとかモラルだとか。そんなもので大事な人に想いを伝えられないのなら、俺はごめんだ。3メートルの法則がどうした。吊り橋効果上等。顔をつきあわせている時間が長いから惹かれ合ってそれの何が悪い。
同じ時間と経験と会話と、それに伴う感情を共有して、理解しあうんじゃないのか。
触れ合ってつながって熱を感じ合ってにおいを交換して、互いのあたたかさに生きてるってかみしめるんじゃないのか。
いつか吊り橋わたった後、平坦な地は一緒に歩けないかもしれないから、なんて予想して、最初から手を伸ばすことすらやめちまうのか。
つないだ手のあたたかさも知らずに。
爆風が去った後残ったのは父さんと母さんの手だけだった。体がふきとんじまったのに、手だけはしっかり握り合っていたんだ。仲のいい二人だった。
その朝おれは二人にひどいことを言った。大嫌いだ、あんたたちなんかいなくたっていい、バカヤローって。母さんは泣いていた。
本気じゃなかった。いつか修復できる傷だと思って甘えていた。そのうちごめんって謝れば、きっと許してくれるって思ってた。
冷たくなった手に謝ったって、なでてもらえるわけじゃない。抱きしめてもくれない。許してなんかもらえない。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。かえってきてよ、お願いだから。胸がくるしいよ。たすけてよ。お願いだよ。
神様に祈ったけど。
奇跡なんて、起きやしなかった。
あとでなんてない。いつかなんかこない。
今しかないんだ。
大事な人に大事だって伝えられるのは。
「んで、どうして締め出し食らったの」
酒とつまみをテーブルに並べながら問う。
「ん~、なんて言うか」
アレルヤにビールをすすめ、俺はノンカフェインのお茶にしておく。スナイパーに酩酊は禁物だ。
あの後、と話し出すアレルヤに、うんうんと相づちを打つ。聞いてるとなんだかちょっとのろけめいた話っぽいけど、甘すぎてお茶のつまみにはちょうどいいかもしれない。
語りたいときに語っちまえ。ビールはキンキンに冷えて飲み頃。ワインもあるし、明日はオフだ。
お前が語りたいだけ語ったら、俺がめいっぱいのろけてやる。
愛しい人を、今この腕に抱きしめられることのシアワセを、耳にたこができるぐらいにな。
さあ、恋バナをはじめよう。
end
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