00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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TV10話の感想小説です。
管理人は感情移入子なので、10話の2人がとっても痛々しかったし、未だクールに見られません。アニメなのにね。
内容は、暗いです。萌えもないし。
そういうのが嫌いな人は、閲覧をお控えください。
ロックオン一人称で、10話の二人。
作中の「ドクター」は、9話ブリッジのリヒとクリスの会話から。
inconsolable
inconsolable
文字通りキュリオスのコンテナに俺は飛び込んだ。えい航してきたキュリオスの機体はまるで死体みたいに力なく、それがコックピットのアレルヤの心情を映し出しているみたいに見えたからだ。
「アレルヤ!開けろ」
ハッチ越しに声をかける。ハロが取り付き、緊急外部干渉モードに切り替わった。目のLEDがせわしなくまたたく。
「ハロ・・・まだか・・・」
ハッチはなかなか開かない。俺はじれた。
ガンダムは基本的にマイスターの言うことしか聞かない。ハロのコンタクトを拒否されたら、打つ手がない。頼む、アレルヤ。
突然、静かにハッチが開いた。
コックピットに沈むようにやつはいた。脱力して、ヘルメットが宙に浮いている。
「ロックオン・・・」
「アレルヤ、大丈夫か」
おれはアレルヤの身体を引きずり出そうと、手をかけようとした。そしたら、力なくその手を払われる。
「アレ・・・」
アレルヤはふるふると首を振ったかと思うと、右手で目を覆ってしまい
「そんな資格、ないから・・・」
そして、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。
身体を震わせて、嗚咽をこらえて、アレルヤは泣く。
資格ってなんだよ。一人で泣くなよ。んな歯くいしばってないで、声出して泣いちまえ・・・とせり上がる思いは、とても口に出せなかった。そんなこと言っても所詮おれの気が済むだけ。今のこいつに受け止める力はない。
知った顔をして慰めるのは、愚か者のすること。こんなふうに悲嘆にくれているときは、泣き尽くすまでただそばにいるしかできない。
わかっているけど、でもなんて・・・なんて苦しくて、もどかしいんだろう。
同じガンダムマイスターで、同僚で、仲間で、弟分で、ダチで、大事で。だからこそ手をさしのべたいけど、触れれば余計、傷にさわりそうで。
だから俺はただ、ここにいるだけ。
無力だけど、それが今俺にできる、たった一つしてやれる事だった。
どれくらい時間がたったのだろう。沈黙を通信が破った。
「ロックオン、アレルヤの方はどう?」
ミス・スメラギだ。
「生きてますよ」それしか言えないけどね。
それで察したのか、ミス・スメラギは「そう・・・」とだけ言った。
「ティエリアは?」
アレルヤが顔を上げる。
「生きて・・・いるわ」
その答えに、アレルヤが俺を見て目で問うた。
「ナドレになったんだよ」
GN-004、ガンダムナドレ。ヴァーチェの装甲の下に隠された、秘蔵の機体。
先ほど目にした姿を思い浮かべる。
アレルヤは目を丸くしたかと思うと、コックピットからはい出した。鼻をすすりながら、機体を蹴って、出口へとむかう。
「おい、アレルヤ」
「ティエリアはどこ?」
「たぶんメディカルルーム。っておい、お前大丈夫かよ」
肩に手をかけようとして、さりげなく距離を取られた。
「ティエリアが泣いてるから」
そして俺のことなんかまるっきり見ないで行っちまう。俺は背中を追った。
メディカルルームにはミス・スメラギとイアン、それにドクター・モレノがいて、ベッドを取り囲んでいた。
「アレルヤ!」
イアンが声をかけ、アレルヤは口だけ笑って見せて答えた。
「ティエリアは?」
アレルヤがベッドに近づく。俺もその後にならった。
ベッドに横たわるティエリアは、ひどくはかなく見えた。目は開いているが、とろんとして焦点が定まっていない。
「これは・・・」精神崩壊?と言外に問う俺に、ドクター・モレノが肩をすくめる。
「精神的ショックが大きかったみたい。脳にもどこにも異常は見られないから、眠ればたぶん回復すると思うけど」
「ずっとこんな感じなの・・・」
ミス・スメラギの声が硬い。俺は彼女の肩に手を置いた。
アレルヤはティエリアの顔をのぞき込んだ。
ティエリアの顔が苦しそうにゆがんだかと思うと「ヴェーダ・・・」とつぶやく。
「ティエリアらしい・・・」
アレルヤが苦笑した。
ふと、ティエリアの目に光が戻った。
「・・・アレ・・・」
ぼんやりと目が宙をさまよう。目的の人物を見つけると、顔をゆがめた。
「キュリオス・・・脱出・・・できた・・・?」
確認みたいにつぶやく言葉に、俺たちは息を飲んだ。キュリオスがろ獲されて、脱出した。これはそういう意味だった。
アレルヤは無言でうなずく。「そうか・・・」ティエリアが大きく息を吐いて、力を抜いた。
手をあげて、隠されていない左ほおに触れようとする。アレルヤはわずかに身をひいた。
「・・・泣いた?」
「少しね」アレルヤが笑う。
「ばかが・・・」
宙に浮いていた左手が、ふわりと布団に落ちた。閉じた目じりに、大粒の涙が溜まる。呼吸が深いリズムを刻み始めた。
目を閉じる前、ティエリアがほんのり笑ったように見えた。
「眠ったわ」ドクター・モレノが言う。「脳波も安定してる。もう大丈夫よ」
ほう、と一同ため息をついた。
「アレルヤ、あなたもチェックを」
「僕は後で」
「でも」
「もう少し・・・すみません」
顔をゆがめて逃げるようにアレルヤは部屋を後にした。水滴が宙に浮き、残る。
俺たちは、止めることができなかった。
「ちくしょう」イアンが壁を叩いた。ミス・スメラギはうつむいて、床を見つめている。
俺は穏やかに眠るティエリアを見た。
メディカルルームを出ると、ちょうど刹那が近づいてきた。ナドレをえい航したあと、ヴァーチェのパーツ回収にかり出されていたのが終わったらしい。「様子は?」と問う。
「ティエリアは眠ったよ。アレルヤは・・・生きてる」
口をつぐむ俺に、刹那が眉をひそめる。
「ロックオン?」
訳がわからないという顔をする。
おれはゆっくり刹那を引き寄せた。刹那は一瞬身じろぎしたが、腕に力をこめると、されるがまま、俺の腕に収まる。
やわらかく抱きしめて、額にキスを落として、髪をなでた。
むかし母さんがしてくれたみたいに。
刹那が俺の背中にそっと腕を回す。
俺は刹那を抱きしめ、髪をなで続けた。
今ひとりで泣いているだろう、こどものかわりに。
end
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