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00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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 14話を一回しか見ていないのに、勢いで。ありがちですが。
 

 スメラギさんの独白。





 道化の夜
 
  
 



 道化の夜


 ふざけないでよ。お安く考えないでよ。あの子たちは人間なの!・・・と罵倒して、眼鏡の向こうっツラをひっぱたいてやりたい、と一瞬沸騰した思いをこらえて、私は作り笑いを貼り付けた。


 洒落たバーのテーブルを挟んで、元恋人である現ユニオンの軍人、ビリー・カタギリが蕩々と語る戦略・・・。いわく、物量作戦でガンダムを攻め、中のパイロットの疲弊を待つ作戦。もっともおそれて、誰も考え及ばないで欲しいと願ったことが現実になりつつあることに、私の胃がぎゅっと絞られた。吐きそうだった。
「オートで動いているかもしれないでしょう」と、ありえないことを口に出してみた滑稽さ加減に我ながらあきれる。モビルスーツは・・・ガンダムは、人間が乗ってこそ意味のある機体だし、それを一番よく分かっているのはこの私。ほら、私の言葉、一笑に付されちゃった。
 戦術予報士の立場からは、現状でガンダムに対してこれ以上のプランはないと言えるわ。セルゲイ・スミルノフが展開した作戦が王道なら、これは姑息な作戦よね。でも私がユニオンの軍人だったら、むしろ進言するでしょう。


 眼鏡の奥にひそむ男の瞳には、何の迷いもない。軍人として、勝つために当たり前の事を言っている自信。そして目の前の女--つまり私--の歓心を引きたいという気持ちも見える。彼の提示したプランは、プロの戦術予報士である女には、極上のエサだもの。ベッドの中で続きを聞きたいと思うわ。私の立場が違えばね。


 でも私は、あの子たちを知っている。あなたが言う、ガンダムの中で疲弊していくパイロットたちを知っているのよ。
 ロックオン。年長者というだけでなく、その人柄から、マイスター4人のまとめ役を買って出ている。戦術にかまけてマイスターのメンタルに気が回らない私を、よくサポートしてくれている。自分だって、弱音を吐き出したい時もあるだろうに、時に暴走する刹那の手綱を引き、弟分のアレルヤや、ティエリアにも気をくばる彼。地上に降りて、一人ふらりといなくなったのは、心のバランスを取るためだわ。ヤサ男だけどね。ほんと、いい男よ。
 アレルヤ。イアン一人を宇宙に残すわけにはいかないとなった際、自分が残ると潔く手を挙げた。「僕の身体は頑丈に作られているから」と屈託無く話す彼に、結局甘えた。本当は人一倍人恋しいくせに、いつもそう。損な役回りを引き受けて、笑っていられる。あんな過去があったにもかかわらず、人を信じることをやめない、優しい、優しい子たち。
 ティエリア。一途なまでにヴェーダに献身しようとするあの子には、その道しかない痛々しさを感じる。もっともっと人間同士の交流を持って、複雑で色んな感情を味わってもらいたい。楽しいことも悲しいことも、まだまだ、彼はこれからなの。
 刹那。無口でぶっきらぼうだし、予測通りにいかなくて、いつもはらはらさせられどおしだけど、それが彼がエクシアである理由だと思ってる。彼の目をみていると、深くてときどきはっとさせられる。意志の強い子。言うこと聞いてくれなくて、ほんと、不安要素だらけだけどね。


 みんなみんな、人間なの。私も、クルーもそうよ。稀代のテロリスト集団が何をセンチメンタルなって?一緒に暮らして、食事したわ。長い時間を共にもした。死線も一緒にくぐった。愛着を感じるには、それで充分じゃない?
 マイスターたちだって、小さなエピソードを積み重ねてきて、そう思っているはずよ。
 猫舌のせいで紅茶をこぼして、手放してしまったティエリアのボトルをあわててロックオンが受け止めて、低重力で空中に滞留した紅茶を刹那が回収して、アレルヤが濡れた服にタオルをあててあげて・・・なんていう一幕もあったわ。無人島で、4人で外でご飯食べたって、アレルヤが嬉しそうに報告してくれたこともあった。
 だからお願い、そんな風に---物みたいに、言わないで。
 
 
 ビリーのもとを辞しながら、ふと自嘲の笑みが浮かぶ。
 ばかみたい。・・・道化。道化だわ。
 盤上のゲームみたいに紛争介入して、人を・・・誰かの父を、母を、息子を、娘を殺しておきながら、自分の知っている人間は死んで欲しくないなんて勝手な理屈を並べて。矛盾してる。ぐちゃぐちゃよ。
 争いというゲームに踊り狂う道化。私も、彼も、この世界も。なにもかも。
 

「それ、でも・・・」とつぶやく。
 それでも、勝手でも、自分の中で一度血が通ってしまった人が死ぬのは嫌だわ。 
 あなただって、そのひとりよ・・・。


 建物から出て、宇宙を見上げた。きらびやかな高層ビルが視界の大半を占めて、星が見えない。
「ずいぶん、遠くにきちゃったなあ・・・」
 過去に残してきた恋と、宇宙に今ある私の家と、両方とも、ひどく遠かった。




 end

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