00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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完結編です。明日の放送前にアップできてよかった!
本編と矛盾するところもありますが、後日改めて本編を見直したら、可能な範囲で修正しようと思っています。
ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
蛇足ですが、熱はひきました。まだ体はだるいですけど。
皆様体には気をつけてくださいね。本当ですよ!!
冴えないけれど、たったひとつの 6
彼は「好きな人がアロウズにいる」という僕の言葉で赤らめていた表情を厳しいものに変えた。
どういうことかと訪ねる彼に、ぼくは今までの簡単ないきさつをためらいつつ話し出した。これまでの経験上、ソレスタルビーイングでは、僕が発言しても最後まで言わせてもらえないか否定されるかだったからだ。
けれど目の前の人物は僕の言葉を遮ることも否定することもしなかった。うなずきながら黙って僕の話を聞いてくれた。おかげで僕の中でくすぶっていた荒れた気持ちが出口を見つけて、説明というよりは単なる八つ当たりの形になってしまったのは、仕方がなかったんだろう。彼にとってみればいい迷惑だったろうけれど、よくつきあってくれたものだと思う。
語る内にハイテンションになってしまった僕は、ここ数ヶ月の鬱屈を吐き出すように話した。語り終えるころには熱心になるあまり、いつの間にか彼を促して床に座り込んでいたぐらいだ。
「……だから僕はなんとしてもルイスを取り戻したいんです。あの子は戦う子じゃない」
「うん」
「だから、ハプティズムさんはどうしたのか教えてくださいよ!」
「アレルヤでいいよ……」
質問を突きつけると、僕の勢いに押されたのかそれまで聞き役に徹していた彼はたじろいだ。
「そう言われても……僕たちの場合は普通の人よりも特殊な要因が多すぎるし、参考には……」
「ならなくても聞きたいんです」
「……うーん……」
振り出しに戻ってしまい、彼は真剣に考え込んだ。これじゃらちが開かないけど、結論が出ないことには僕の気持ちが収まらない。質問を変えることにした。
「それじゃ、もし今でもマリーさんがアロウズにいたら、どうしてましたか」
「どうって」
「刹那は言ってました。彼女を取り戻すための戦いをしろと。でも僕には詭弁としか……」
「そう。刹那が……」
そうして彼は黙り込んでしまい、僕らの間に一瞬沈黙が流れた。じれた僕に先んじて、再び彼が口を開いた。
「……僕の戦う理由は、マリーを取り戻すことだった。今はマリーを守ることがそうだよ」
「戦う……理由」
「うん」
戦う理由。
結局戦わなければならないんだろうか。ルイスを取り戻すために。僕らの幸せを壊したソレスタルビーイングに協力して?
その時の僕は戦いへの嫌悪感が先に立って、彼の言葉をすんなり受け入れることができなかった。
「さっきの答えだけど、もしマリーがまだアロウズにいたらだったよね……結局叫び続けるしかできなかっただろうね」
そういって彼は僕に笑いかけた。
どんな言葉を? と問う僕に、目を泳がせながら彼が答えた言葉は。
「愛してる……か」
ぼんやりと吐き出した僕の言葉に、彼は弾かれたみたいに僕の方を見た。
僕と目を合わせた彼はひどく情けない顔をしていて、あのときの自信と幸せに満ちた顔とは全然違っている。この4ヶ月、マリーさんがソーマという人格に変わってしまってからというもの、ずっと彼女に拒否され続けてきたんだから無理もない。僕の顔も同じようなものだろう。
想い人に手が届かない、情けない男が二人途方に暮れている。
お互い顔を合わせたあと、目をそらした。男が男に涙を見られるなんて冗談じゃないから、見ないでおいてやる。
あのとき「愛してる」なんてぬけぬけと言ってのけた男は、変わってしまった彼女を受け入れられずにいる。
僕はと言えば、ルイスに会うには戦場に出なければならないというのに、どうしてもその決意がつかずにいる。
そして僕ら男達がもたもたしている間に、彼女たちは決然と自分の選んだ道を行ってしまう。
再び頭を抱えてしまった彼を横目で見て、それから自分の正面を見た。
僕の眼下にはハンガーが見えて、いつの間にか僕がパイロットになってしまった機体、オーライザーがある。
静かで力強いその姿が、僕に勇気をくれる気がした。
僕にできるだろうか。取り戻すための戦いを。
ルイスに僕の想いを叫ぶことができるだろうか。
まるで冴えないけれどたった一つ、僕がルイスにどうしても伝えたい想いを。
それが僕の、戦う理由なら。
アロウズ部隊接近の報が鳴り、艦内が慌ただしくなった。刹那が再び僕に言う。彼女を取り戻すための戦いをしろと。
「会いに行こう、ルイス・ハレヴィに!」
「ああ……ああ!」
そして僕は彼の手を取る。
もう後戻りはできない。後悔もしない。逃げない。
宇宙(そら)で待っててルイス。僕が今会いに行く。
僕の想いを、君に叫ぶそのために。
end
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