00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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ちょっと体が楽になったのでPC作業。おお、らっくちーん!!
また熱があがらない程度に、上げておきます。
久しぶりに時間に余裕があるのでうれしくって~(^o^)
(追記)
書いてたら熱があがってきました。
ふりだしに もどる
冴えないけれど、たったひとつの 4
冴えないけれど、たったひとつの 4
堰を切った涙があとからあとからこぼれてくる。イアンさんの姿がぼやけて、僕はカプセルに額を押しつけた。
「僕は……僕はただ、戻りたいだけだったのに……どうしてこんなことになっちゃったんだ……僕は一体どうしたらいいんですか……おしえて、ください……」
彼は何も言わない。
彼は僕がどうしても、どうしても撃てなかったとき、「それでいい」と言ってくれた人だ。だからこそ今、話を聞いて欲しかった。
「ルイスがアロウズに……ガンダムがにくくて……僕は、ここに、いて……ぼくは、彼女の敵になって……どうしたら……」
吐露してもどうしようもないことだとわかってはいる。けれど吐き出さずにはいられなかった。
苦しいんだ。もどかしい。胸が痛い。出口の見えない暗闇に放り出されたみたいに心細い。
僕は、無力だ。
ふいに背後でドアの開く音がした。
振り返ると、オレンジ色のパイロットスーツに身を包んだ人影が立っていた。彼も僕がいると思わなかったのだろう。同時に発した「あ」が重なった。
「ハプティズムさん……」
僕は慌てて涙を拭って彼に背を向けた。男が男に涙をみられるなんて冗談じゃない。武士の情けだ、見逃してくれ。
「あー、えっと……、誰かいると思わなくて」
「イアンさんの容態が気になって」本当は泣き言言いにきたんだけど、と心の中でつぶやいた。
「僕もなんだ」
そう言って彼がカプセルに近づいてくる。あからさまに席を立つのもためらわれて、僕も傍らにとどまった。
彼は枕元の危機に素早く目を走らせ、いくつかの数値を確認すると「大丈夫そうだね」と微笑み、ポケットから端末を取り出した。
「邪魔して悪いけど、ちょっといいかな」
「あ、僕はもう……」
「そのままいてよ。その方がきっと喜ぶし」
「は?」
意味不明だ。この人はなにを言っているんだ?
僕が混乱している間に彼は端末を操作し、通信画面を立ち上げた。一瞬後、栗色の巻き毛とともに明るい声が飛び込んできた。
『はいはーいです!』
「ミレイナお疲れさん、そっちの調子はどう?」
『ハプティズムさんですか? はい! 全力で整備中ですよ~! ハロたちもがんばってくれちゃってます! もうすぐセラヴィーを終えて、今度はケルディムにまわりますです!』
明るい声がメディカルルーム一杯にこだました。
「彼女が整備を!?」僕が驚くと、「今はイアンが治療中だから、彼女一人で、艦の修理もね」とハプティズムさんはさらりと言った。
『クロスロードさんもご一緒なんですか? はいです、ミレイナはメカニックなのですよ』
にっこりと彼女が笑った。
前回の戦闘で、ガンダムが深手を負ったことは知っている。イアンさんの怪我のもとになった砲撃で、艦の破損が甚大だということも。まさかそれを女の子がたった一人で修理しているなんて、僕は思っていなかった。
目を白黒させる僕をよそに、二人の会話は続く。
「進行具合は? なんとかなりそう?」
『なんとかするのです。パパの口癖ですよ。メカニックに休みはない! すばやく丁寧、正確に』
「頼もしいね。……大変だろうけど、がんばって」
『はいです! それじゃ切りますね、超特急なのです!』
「ミレイナちょっと待って!」
『え?』
通信を切ろうとした彼女を彼は素早く制して端末を操作し、カメラのモードを切り替え、眠るイアンさんの姿を写した。
『パパ!』
「今メディカルルームにいるんだ。ミレイナは整備が忙しくて全然こっちにこられないだろ。だからイアンの様子が見たいだろうと思って」
『パパ……』
端末の向こうで声が潤んでいる。
「アニューにも聞いたと思うけど、数値は正常、怪我もたいしたことないよ。顔色もいいし大丈夫」
『はい、です……』ぐす、とすすりあげる音が入った。そうか、彼女はまだ父親の顔を見ていないんだ。だから彼は……。
『ありがとうハプティズムさん。クロスロードさんもパパを見舞ってくれてありがとうです! 嬉しかった』
「ぼ、僕は別に……」
泣き言を言いに来ただけで。うしろめたくて目をそらした。
「もう少しだから、がんばってね、ミレイナ」
『はいです! ミレイナ頑張っちゃうです!』
明るい声とともに、通信が切れた。
to be continued
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