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00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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 18話の派生です。
 スメラギさんに、こうあってほしいという管理人の願望であります。
 私はスメラギさんが好きなのですが嫌いです。でも好き。
 そんな気持ちの表れ。
 
 
 
 スメラギさんの一人称です。



 
 myself,myself



 myself,myself



 エイフマン教授が、トリニティの攻撃で亡くなっていた・・・・・・!?
 その衝撃をかみくだく余裕もあたえてくれず、クリスからの報告が重なる。エクシアがトリニティを紛争幇助対象と断定して、武力介入に向かったと。
「スメラギさん!とにかく早く、ブリッジにきてください!」クリスの緊張した声が私を呼ぶ。
「わかったわ。ロックオンに指示。刹那を止めて!」と言い、出口に向かおうとしたとき、目がウイスキーの瓶を捕らえた。
 ううん、いまのは適切な表現じゃなかったわ。正確には、私の目がウイスキーの瓶を探した、よ。
 ひったくるようにして瓶を取り上げると、デスクに常備してあるグラスに、ウイスキーを勢いよく注ぐ。そのまま一気に飲み干した。
 のどが焼けるような感覚と、鼻から抜けるオークの香り、強いアルコールによる酩酊感が、私の心を軽くして、雑念をはらってくれる・・・・・・はずだった。
 でもあおったグラスを置いたそばには端末が開いたままで、エイフマン教授の訃報を目が捕らえてしまった。
「・・・・・・!」
 もう一度、グラスにウイスキーを注ぐ。再度あおろうとしたとき、急に涙がせり上がってきて、グラスを口につけられなくなった。
 グラスをデスクに置いたのは、泣いたからじゃないわ。
 泣いて手が震えたら、せっかく注いだお酒がグラスからこぼれてしまうからよ。
 デスクに置いたままグラスをきつく握りしめて、私は泣き続ける。
 もう、これ以上は無理。
 いきなり現れたトリニティの存在、その情報の少なさ。そして彼らの非道な武力介入。
 エイフマン教授は、彼らに殺された。
 彼らに、私たちの活動計画は、めちゃくちゃにされてしまった。
 そして何よりも、ヴェーダが信頼できなくなっているということ。
 量子演算コンピュータであるヴェーダがなかったら、一体どうやって、この世の膨大な情報を収集して検証して、最適な道を導き出すって言うの?
 ヴェーダ抜きで、ソレスタル・ビーイングとして活動できるとは思えない。絶対無理よ。
 ヴェーダの推奨するミッションを、ヴェーダの計画通りに遂行してきたから、私たちはこれまで成功してきた。
 ヴェーダの情報処理能力があったから、確実な情報をもとに、私は正確な戦術予報ができた。
 ソレスタル・ビーイングでは、ヴェーダの指示は絶対だし、言ってみれば神そのものだわ。
 導き手がいなくなったら、哀れな人間は、どうすればいいのよ。
 ヴェーダにすべて預けることで、私は逃げてこられたのに。

 
 忌まわしい記憶が蘇ってくる。
 大勢のひとが、私を糾弾する。部屋のすみで身体をちぢめて、私はそれを聞くしかなかった。
 彼らは叫ぶ。命を返せ、命を返せ。
 お前は間違えた。お前が間違えたから、大勢が命を落とした。
 お前の罪だ、お前の責任だ!


「スメラギさん!」
 クリスの声で我に返った。私の情けない姿を見て、クリスが息を詰める。
 瞳をゆらしたかと思うと、「状況をそっちに送ります。指示をお願いします」と言って、ディスプレイから消えた。
 入れ替わりに表示されたのは、エクシアの進路。あと約1500kmで3機のスローネと正面から接触するコース。ガンダムの推進力ならばものの数分。私は通信をオンにした。
「刹那やめなさい!今は彼らを刺激しないで!まだ何も情報がないのよ!!」
「じゃあやつらを黙って見ていろっていうのか!!」
「そんなこと言っていないわ!でも今は静観して!ヴェーダからは何も指示がないのよ!引き返しなさい!刹那!」


「関係ない!今やらなかったら、もっと人が死ぬ!」
 腹の底からの叫びだった。
「もっと、ひとが、死んでいくんだ!!!」 


 --圧倒されて、何も言い返せなかった。呆然とディスプレイを見つめる私の目に、エクシアとスローネの光点が重なるのが見える。
「エクシア、目標を補足。3機のガンダムスローネを、紛争幇助対象と断定し、武力介入を開始する。--エクシア、目標を駆逐する!」
 あっけなく通信が切れた。
 「エクシアとスローネ、交戦状態に突入」クリスの声が、むなしく響く。
 涙ももうひっこんだ。
 動いてしまった。何もわからないのに。情報がないのに。ヴェーダがいないのに。
 ヴェーダの指示も、私の予報もないのに、たった16歳の、きかん気の、エクシアのパイロットが、その感情でもって、彼の意志で、状況を動かしてしまった。
 どうしたらいいの?
 握りしめていたグラスを震える手で持ち上げる。揺れる琥珀色の中に、途方にくれた情けない女の姿を見たとき、私の中の何かが切れた。

    
 グラスを床にたたきつけて割れた音を背中に聞きながら、私は私物入れに突進した。荷物をひっかきまわして、余計な物を床に放り出す。たちまち衣服が床を埋め、余計な荷物の奥から、私は目的の物を見つけた。
 ”Diary 2303”
 A5サイズのハードカバー。あの事件のあった年、あの日までつけていた、日記帳だった。
 表紙を開くと、書いてあったページをすべて破り取る。それを乱暴に丸くまとめて、ベッドに放り出した。
 白いページだけになった日記帳とペンを持ち、部屋を飛び出す。リフトグリップを握りしめて、ブリッジを目指した。



「考えるのよ!」
 私にあるものは、たった数十枚の紙と、ペンと、そして自分自身だけ。
「頭の中だけじゃだめ・・・・・・情報を集めて、書き出して、俯瞰して、整理しなくちゃ・・・・・・」
 これから私がやろうとしていることは、何百年も前の、原始的な情報処理だ。
 けれど脳が、これまで以上に集中して冴えわたっているのが、私には分かる。
 コンピュータじゃなくて、人間の力で、今を判断し、行動する。
「自分自身で、考えて考えて、考えなさい。スメラギ・李・ノリエガ」
 声に出して、自分に活を入れる。


「16歳の坊やなんかに、負けていられないんだから」


  

 end

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