忍者ブログ
00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




 刹那お誕生日小説です。
 ロク刹と、ちょびっとアレティエ。
 人物は本編中期くらいの感じで。ティエリアに「俺」と言わせるのがすごく違和感ありました。

 元ネタはとある海外文学から。素敵な話だなーと思ったらロク刹に変換していました。これだから・・・・・・orz
 展開が見えちゃうので元ネタは最後に表示しときます。



 Love Message





 Love Message



 プトレマイオスの展望室に刹那はたたずんでいた。手を壁について宇宙を眺めているが、その目は暗く沈んで何も映していない。
 展望室から30m程離れた通路で、ロックオンはどうしたものかと思案しながら壁に寄りかかっていた。傍らにはティエリアがいる。ティエリアは腕組みをして目をつりあげ、今まさにロックオンを詰問しているところだった。
「いいかげん刹那・F・セイエイとの仲を修復したらどうですかロックオン・ストラトス。もう一週間あなたたちは口もきいていません。明日にはエクシアとデュナメスの共同ミッションが控えているのにこれでは連携が取れない」
「分かってるさ」 
 ロックオンはため息をついた。「でも突然別れようって言われて、理由を聞こうとすると逃げちまう。全然とりつくしまもないんだ」
 ティエリアは内心舌打ちした。別に自分は彼らが仲違いしようがどうでもいい。人間関係に首をつっこむつもりなど毛頭ないのにこのざまだ。
 大体こんなときにアレルヤがいないのが悪い。あいつがいれば、誰に言われなくとも二人の間を走り回りあれこれ取りなすだろうに、2週間前から地上に降りて単独ミッションの最中で、あと4日は戻ってこない。
「とにかくマイスター同士の諍いはミッションの妨げになる。早急に改善するようにとヴェーダからの指示だ」
 だから仕方なしに自分はここにいるのだと暗に言うティエリアをロックオンは見やった。 もうティエリアの言動にいらだちすら覚えない。突然の別れ話とここ一週間無視され続けていることが、相当こたえているのだ。
「くそっ・・・・・・ああもうティエリア頼む、刹那にメッセージを届けてくれないか」
「人に頼むなんて、あなたらしくありませんね」
「らしくなくても何とかしたいんだよ。刹那が話どころか通信すらも拒否するから、もうこれしかないんだ。俺たちはあんなに・・・・・・愛し合った仲なんだから、最後にもう一度考え直して欲しい。理由も教えず、説明するチャンスも与えずに一方的に切り捨てるなんてお前らしくないって。もう関わるなって言われても、もう一度ちゃんと話をしたいんだって伝えてくれティエリア。ヴェーダの指示なんだろ」
「君たちの床事情なんてどうでもいいんだが」
「も、俺泣きたい」
 ヴェーダを出されるとティエリアは弱い。ぶつぶつと文句を言いながら、展望室に向かった。


「おい、刹那・F・セイエイ。ロックオン・ストラトスがお前に文句を言いたいそうだ。別に聞かなくてもいいし、俺はどうでもいいがメッセンジャー役にされたらしい。ロックオンがあえて俺に託したメッセージすら聞きたくないと言うなら、俺は去るが?」
 聞いているのかも分からない刹那の背中にティエリアは言葉を投げる。このまま無関心を通すつもりならそのまま立ち去るつもりでいたが、刹那は「文句?」と言いながら振り向いた。
「そうだ。聞く気はあるか」
「・・・・・・言ってくれ」
 やれやれと肩をすくめてティエリアは言った。
「たいした話じゃない。あらゆる接触を絶たれたものだから、仕方なしに俺にメッセンジャーをさせただけだ。急に別れ話をされても納得できないひどい話だそうだ。せめて理由を教えてくれと」
「ひどい、か」目を閉じて刹那がうめいた「どっちが・・・・・・」と小さくつぶやくと、決心したようにティエリアを見据えた。
「ロックオンに伝えてくれ。俺は遊びで人と恋愛できるほど器用じゃないし、二股もごめんだって。俺なりに考えて出した結論なんだ。でもあいつの言い訳を聞いたら揺らいでしまう。だからロックオンの言葉は一切聞かないと決めた。それでも理由を言えっていうなら、今から言うことを伝えてくれ」
 ここで刹那は大きく息を吸い込んだ。
「俺は一週間前、ロックオンが格納庫でフェルトと二人っきりでいるところを見たんだ。二人はその・・・・・・いい雰囲気で、お互いにすごく近づいていて・・・・・・俺は立ち去るしかなかった。だから俺は別れる。それだけだ」
「別れたいほどの理由になっていないぞ、具体的に説明しろ。近づいていたというのはどの程度だ。キスか、セックスか」
「セ・・・・・・!」
 あまりにもあけすけな物言いに、刹那の顔が首まで真っ赤に染まった。宙に目を泳がせてしどろもどろになりながら、やっとの思いで声を出す。
「そ、そのあいだ・・・・・・」
 フン、と言ってティエリアはきびすを返した。


 通路に戻るとロックオンは食い入るように見つめてきた。ティエリアはやれやれとため息をつく。
「刹那が言うには、いいわけなんか聞きたくないそうです。一週間前に、格納庫であなたとフェルトの親密な肉体的接触を目撃して別れを決心したと言っていました」
 ロックオンはあ然としてティエリアを見ていたが、ふいに何かを思いついたように瞳を輝かせた。ハロを掴み、端末をつないで録画データを検索する。目的のものを見つけると、そのままハロをティエリアに渡した。
「このデータを見てくれって刹那に言ってくれ。それで誤解が解けるはずだって。そのときすぐに聞いてくれればちゃんと説明したし、こんなに気が狂いそうにならなかったのにって言ってくれ。俺が刹那を想う気持ちは、決して揺らいでいないって。
 あ、それから、お前はデータを絶対見るなよ!ハロを渡したら展望室から出て、返事だけ聞いてきてくれ。頼むから!」


 ティエリアは刹那のところに舞い戻り、ハロを端末がついたまま刹那に放った。
「このデータを見てくれだそうだ」
 刹那はいぶかしみながらも、ハロのデータを再生し始めた。勿論ティエリアが遠慮する訳がない。


『よっし、ハロ。ここらへんに居てくれ』
 ロックオンの顔が画面一杯に映し出され、ハロを置く音がした。
『メッセージ、メッセージ』
 ぴょんぴょんとハロが飛び跳ねるに合わせ、画面が激しく上下する。
『おとなしくしてくれよハロ。大事な用件なんだから』
 画面いっぱいにロックオンの両手が広がりカメラを固定すると、コホン、と言いながらフレームに収まり、表情を改めた。
『えっと、刹那。ハッピーバースデー。・・・・・・って言っても、こんな宇宙に居たんじゃ何も贈ってやれないけど、気持ちはすごくあるんだぜ。今度地上に降りたとき、一緒に買い物に行こう。何でも好きな物、プレゼントするから』
 うあ~、なんかこれ面と向かうよりも照れるぞ、と赤くなり横を向くロックオンに、ハロが『ロックオン、ガンバレ、ガンバレ』と声をかける。
『そうだな、コホン、・・・・・・あー、刹那。それでプレゼントを当日にやれないかわりに、ちょっとしたメッセージを贈る。なんか、今更改まって言うのも照れくさいし、俺は柄じゃないって言ったんだけど、物じゃなくてもこういうのが嬉しいんじゃないかってアレルヤが』
 そう言って髪をかきむしりうつむく。まいった、やめりゃ良かったとしばらくぶつぶつ言っていたが、やがて決心したように顔を上げ、深呼吸してハロを見据えた。
『俺は一番年上だからさ、はじめのうちは、お前たちより何でも知っているし出来る気になっていたんだよな・・・・・・お前がたった14歳でマイスターとして入ってきて、年齢よりもずっと小さい子どもに見えて、自然と最年長の俺が面倒みてやろうって思った。
 でもそのうち、それが俺の思い上がりだって分かった。お前は一途で、揺るぎなくて・・・・・・ほんとうに強い。多分他の誰よりも、ガンダムマイスターなんだって俺は思う』
 刹那の目が見開かれた。ティエリアは硬い表情をしており、眼鏡に端末の画面が映り込んでいる。
『もちろん最初のうちは、変なガキだって思っていた。俺がガンダムだとか、俺は生きているとか、わけのわからない台詞言うしさ。意味わかんねーよな』
 けらけらと笑う。
『でもすごいスピードでガキがめちゃくちゃ男っぽくなってさ。こっちが引っ張っているつもりだったのに、いつの間にか肩ならべて、俺よりもずっと遠くを見て走っていやがる。・・・・・・そのうち俺が背中追いかけるようになるかもな』 
「ロックオン・・・・・・」
『刹那、俺はお前のこと尊敬してる。ガンダムマイスターとして、エクシアのパイロットとして、そして男として。それから』
 ごくりとのどをならして、ロックオンが顔を引き締めた
『それから、俺はお前のこと大事で、本当に愛』
『ハロ、ロックオン。そこにいるの?』
『うわあっ!!』
『フェルト、フェルト』
 画面の外からフェルトの声が入り、ハロが反応して飛び跳ねる。ロックオンが慌ててハロを捕まえようとし、画面を顔が占領したかと思うとたちまち暗転し、悲鳴とともに何かがぶつかる音、金属音が混じり画面が明暗交えて二転三転する。しばらく騒ぎが続き、ややあってようやく画面が安定した。
『フェルト、ダイジョウブ。フェルト、ダイジョウブ』
『いてて・・・・・・怪我はないか、フェルト』
『う、うん』
 ハロのカメラはフェルトを捕らえている。とっさにかばったため、ロックオンの腹の上にフェルトが馬乗りになっている格好だ。
 そしてロックオンの両手はフェルトの胸をしっかりと支えていた。
『ロックオン、手・・・・・・』
『あっ・・・・・・と、ごめんなフェルト。わざとじゃないから』
『うん。分かってる。私、重かったよね』
 ごそごそと離れる二人にきまずい空気が流れる。場を明るくしようとしたのか、ロックオンが墓穴を掘った。
『いや、役得役得。割と胸があ』
 わきわきと両手の平を動かして笑うロックオンが、一瞬後すさまじい音とともに画面の外に飛んで消えた。



「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・刹那・F・セイエイ」
「・・・・・・」
「とりあえず、俺は返事を伝える役だが」
 刹那はきまずそうにあさっての方向を向いている。耳まで真っ赤になっており、その表情は多分泣き笑いのそれだろうとティエリアは思った。たっぷり30秒はたってから、刹那が口を開いた。
「ティエリア・アーデ。ロックオンに、伝えてくれないか・・・・・・」



『それで、どうなったの?』
「どうもこうもない。自分で言えと展望室を追い出してやった」
 端末の向こうで笑いを抑えきれないでいるアレルヤを苦々しく見やりながら、ティエリアは紅茶のボトルに口をつけた。
「大体、君がいれば俺はあんな事をしなくてもよかったんだ。あれは本来君の役だろう」
 ぷんすかと怒るティエリアに困った顔をしながら、まあまあ、とアレルヤはなだめる。
『でも素敵じゃない。愛のメッセンジャー』
「どこがだ。まわりくどい事をしないで、好きなら好きと面と向かって言えばいいんだ。ビデオレターだの伝言だの、状況が混乱するだけじゃないか。俺だったら面と向かってはっきり言われた方がいい。その方が気持ちが伝わってくるし、返事だってその場でできるだろう」
『ティエリア』
「何だ」
『君が好きだよ』
 ティエリアが固まった。手から滑り落ちたボトルがゆっくりと落ちていく。
『僕はティエリア・アーデが好きです』
「あ・・・・・・」
『返事、その場でくれるんだよね、ティエリア』
 いつもなら穏やかなアレルヤのブルーグレイの目が熱っぽく自分を見ていて、ティエリアは思わずあさっての方向を向いた。顔が熱を持ち、耳まで真っ赤になっているのがわかる。自分の表情は多分泣き笑いのそれだろうと思った。
 アレルヤの視線を感じながら、先ほどの刹那をふと思い出す。自分で行ってこいとけり出したときの情けない顔。人のことは笑えなかったなと頭の片隅で自嘲した。
 答えなんてとっくに決まっている。ただ告げるには心の準備が出来ていないだけで、心臓が引き絞られる痛みが切なくて、声が出ないだけだ。
『ティエリア』
 再びアレルヤが答えを促すのにいたたまれなくなり、ティエリアはぎゅっと手を胸に当てて目を閉じた。



 end




元ネタ
オー・ヘンリー作「愛の使者」より


拍手[2回]

PR

Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[84] [83] [81] [80] [79] [78] [77] [76] [75] [74] [73
«  Back :   HOME   : Next  »
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
WEB拍手
没ネタ企画こっそり開催中です
最新CM
最新TB
プロフィール
HN:
KAZAMI
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ [PR]