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00の世界を借りて、いろいろ書き散らしています
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 タイトルで期待された方、ごめんなさい。

 萌えのひとっかけらもないので・・・・・・(←またか)。


 22話派生で、アレルヤが言いたいこと言っているだけのお話。ロク兄の行動最高!と思っている人は読んだら怒りそうです。
 あと私の中でアレルヤは、本当ならちゃんとやんちゃのできるおとこのこ!っていうイメージなので、ちょっと言葉が乱暴になってます。

 
 それでは続きからどうぞ。

 


 僕があなたを守ります

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 僕があなたを守ります



「あなたは愚かだ」
 ティエリアが捨て台詞を残して展望室を出て行く。
「どういう意味だ?」
 僕に問うロックオンに、僕は肩をすくめて「さあ?」と返した。
 けどね。
「けど・・・・・・僕もロックオンに同じこと言いたい気分です」
 物問いたげに彼が僕を見る。その綺麗な青い瞳がひとつだけということに、僕の心臓は今更ながらに痛みを訴えた。 


 彼は利き目の治療を拒否した。治療カプセルに3週間入れば完治するというのに。
 確かに今は非常事態で、彼を欠けば戦力的には大打撃だ。彼抜きでの勝算は低く、それを踏まえての行動だろう。それは僕だって分かっている。
 けれど治療すれば治るものを拒否して動きまわり、あまつさえ不自由な目で戦おうとする。そんなことをしていたら・・・・・・。
「ドクターの治療を受けて休んでください。ロックオン」
「そりゃできない相談だ」
 兄貴は軽く即答だ。言うと思った。
「無茶すぎるんだ。あなたは」
「そうか?」
「そうですよ。あなたのやっていることは、僕にはただのやけっぱちにしか見えない」
 ロックオンが表情を変え、眉をしかめて僕を見据えた。その目は鋭くて、僕の弱い心などすぐにでも射抜かれてしまいそうだ。けど僕もここで引くつもりはない。
「・・・・・・言い過ぎなら謝ります。でも言わせてください」
 ここで僕は一息入れた。僕が感情的になっても、ロックオンは笑ってこちらを気遣うだけだ。なんとしても話を聞いてもらわないといけない。
 僕は用意していた言葉を並べ始めた。
「以前ならともかく、世界とソレスタルビーイングのパワーバランスが逆転している今、疲弊している状態でこのまま武力介入を続けることは無茶です。体制を立て直すべきなんだ」
 ロックオンが口を閉ざしている。僕は続けた。
「『ソレスタルビーイングに沈黙は許されない』それは確かだ。でもそれは、向こう見ずに突進しろということじゃない」
「言うねえ」
「ちゃかさないでください」
「向こう見ず、か」とロックオンが苦笑した。「お前さんには、そう見えるかもな」
「がむしゃらって言い換えてもいい。あなたの表現を借りれば」
「アレルヤ」
 多分僕がここまでしつこく言いつのるのが珍しいんだろう。ロックオンが目を丸くした。
「僕らは進まなければいけない。それは分かっていますよ。僕だって今更手を引く気はない。でも・・・・・・いや、だからこそ、ちゃんと体制を立て直すべきなんだ。あなたが負傷しデュナメスが使えない今、こっちの戦力はガンダム3機とアームズ1機。対する国連軍は、人革も含めれば30機弱。性能差を割り引いたって、今の状態じゃ総合力では圧倒的に僕らが不利だ」
 スローネは戦力に含められない。共闘できれば状況も変わるだろうけど。
「俺は黙って滅ぶ気はないぞ」
 わざとブリーフィングでの僕の言葉を混ぜ返し挑発してくる。嫌な相手だ。けどその手にはのらない。僕はかまわず言葉を続けた。
「僕たちは職業軍人じゃない」
「当たり前だ。俺たちは争いをやめさせるために戦っている」
「彼らから見ればアマチュアだって言っているんです」
 そこで僕はわざと笑ってみせた。
「僕だってだてに超兵機関にいたわけじゃないんだ。軍隊の力は嫌って言うほど知っている。勝利のためには手段を問わないこともね」
「アマチュア、ね。俺たちがいままでガンダムの力頼みで勝ってきたとでも?」
「ガンダムが圧倒的抑止力だったんですよ。今までは」
 ロックオンの目が揺れた。
 今の台詞で僕の過去にあたりがついただろうけど、今更そんなこと知ったことじゃない。怒られようがどうしようが、彼の熱を冷ます方がずっと大事だ。僕はたたみかけた。
「プロの軍人が同等の力と上回る数を持って、優秀な指揮官のもと統率された行動を取ればどうなるか、わからないあなたじゃないでしょう」
「・・・・・・」
「各国はエースをそろえて万全の状態でしかけてくる。理想と意地だけで突っ走っても負ける。あなたには今それが見えていないんだ」
「おいおい」
「僕たちが負けないためには、あなたが万全であることが必要だ。だから治療を受けて下さいロックオン・ストラトス」
 これでどうだ。僕は言葉を切った。とりあえず言えることは言った。
 ロックオンの目を見据えてやる。


 ややあって、ロックオンが苦笑した。
「意地、ね。お前さんもわりときつい事言うな」
 ああ言うさ。言ってやる。
「でももう刹那は行っちゃったぜ。ミス・スメラギのお墨付きで」 
 そう言って、してやったりという風情で僕を見た。
 そこを突くか。
 刹那を行かせることには、僕は反対だった。スメラギさんの判断だから容認したけど、彼女の真意も理解できない。僕は手を握りしめた。
「今は戦力を分断するべきじゃなかった・・・・・・」
「ちゃんと刹那は帰ってくるよ」
 ロックオンが静かに言う。
「帰ってくる」
 そう言って嬉しそうに笑った。 


 どんな自信だよこの野郎。僕は頭に血が上るのを感じた。とんだ頑固者だ。
 この人はいつもそうだ。穏やかで飄々とした風を装いながら、強引に自分の思い通りに歩いていこうとする。道をはっきり見据えて、前へ前へ進むその姿に僕は安心できたし、共に進んでいけるとも思っていた。
 けれどそれはがむしゃらとは違う次元の話だ。進むべき道が濁流で絶たれていたら、別のルートを探すか橋が架かるまで待てるひとだと思っていた。 
 まさか飛び込んでいこうとするとは思っていなかったんだ。


「あなたは大事な人だ」
「お前だって大事だよ」
 僕はかぶりを振った。「戦力の問題じゃない。あなたという人物が大事なんだ。あなたの存在がどれだけ大きくて、僕たちの支えになっているか」
「大げさだなあ」
と彼は笑う。どう言えばこのひとを説得出来るんだ。
「僕はあなたが犠牲になって欲しくない」
「戦力のためにか?」  
「そういう意味じゃない!」
 ああもう僕の言葉は全然届いていない。僕は声を荒げて壁を叩いた。反作用で反対側の壁によりかかるロックオンのすぐ目の前に移動する。バーを掴み、目を丸くして突っ立っているロックオンににじりよってやった。もう感情まかせだろうとかまうもんか。この分からず屋が。
「そんな状態で闇雲に出撃してどうする。なぶり殺しにされるだけだ!そんなこと僕には耐えられない。僕はあなたに死んで欲しくない。それ以上傷つくのもまっぴらごめんだ!」
 くそ、涙がにじんできた。
「治療を受けて下さいロックオン。刹那もラッセもすぐに呼び戻す。3週間、何があっても僕たちが耐え抜いてみせる。トレミーもスメラギさんたちもきっと全員守る。計画もこんなところで終わらせない」
「アレルヤ」
「だから僕たちを信じて、お願いだから治療カプセルに入ってください。ちゃんと目を治して・・・・・・」
 あとはもうのどに塊ができたみたいに声にならない。僕はうつむいた。
 情けない。
 情けないけど、やっぱり僕じゃだめだ。
 どんなに心配してもこのひとの意志は揺るぎない。僕なんかが理屈を並べても通じない。
 結局、僕はこの人に何もしてやれない。守ってやりたいのに。



 ふいに肩が温かくなった。ロックオンの手が、僕の肩に静かに置かれている。僕は顔を上げた。
「お前さんね・・・・・・最初っからそう言えよ。このばか」
「ロックオン」
「戦力だの負けないためだの言うから、俺ってそれだけなのかってちょっと拗ねたぞ。心配してるならそう言えって」
「・・・・・・言っているつもりでしたけど」
 鼻をすすり上げる僕に、ロックオンはあきれ顔をして頭を抱えた。
「伝わんねーってあれじゃあ!お前、説得すんの下手くそだな」
 放っておいてくれ。恥じ入ってまた僕はうつむいた。
「理屈よりも感情の方が心に届くんだ。覚えとけよ。それに、伝えたいことはストレートに言え。分かりづらいだろうが」
 そう言って彼はぽんぽんと僕の頭を叩く。
「死に場所求めているわけじゃないから、安心しろよ。それに俺はやけ起こしてもいないぞ。お前らを信じていないわけでもない。でも寝ても居られないんだ。分かってくれ」
「分かりませんよ」
「やれやれ」
 ロックオンが頭を掻いた。
「まあ・・・・・・心配してくれて、ありがとうな」



 それでもカプセルに入る気はないというロックオンに僕はしつこく食い下がったけど、結局ロックオンの硬い意志は変わらなかった。とりあえずドクターのところには行く、休養もちゃんと取る。出撃は最低限のみ。それだけはしぶしぶ確約させた。手間のかかる人だ。
 僕にしつこく説得されてげんなりした様子でロックオンは立ち去ろうとする。最後に僕はその背中に声をかけた。
「ロックオン」
「なんだよ。まだお説教かあ?」


「僕があなたを、絶対守ります」


 ストレートに僕の決心を伝える。今度は伝わったらしい。ロックオンの背中がしばし固まった。
 10秒くらいそうしていただろうか。
「そりゃこっちの台詞だ」   
 背中で返事をして、ひらひらと手を振り、ロックオンは行ってしまった。




 end

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